予防歯科
診療の流れをご確認のうえ、
受診くださいますようお願い申し上げます。
予防歯科という言葉をご存知でしょうか。日本では、歯科医院は「歯が痛くなったら行く所」という昔からのイメージがあり、予防歯科という概念があまり知られていません。
しかし、現在では、症状があったら行くという歯科医院の使い方では、50歳を過ぎた頃から少しづつ歯を失いはじめ、最終的には入れ歯やインプラントが必要になってしまうということがわかっています。
スウェーデンなどの歯科先進国、歯科医療技術の進んでいる国では、歯科医院は「痛くならないために行く所」です。
そして、虫歯、歯周病は「稀な疾患（珍しい病気）」と考えられています。
適切に対応すれば、ほとんどの虫歯や歯周病は予防できます。本来ならなくて済む病気なのです。
岡戸歯科医院では予防歯科を実践しています。
虫歯や歯周病を治療するだけではなく、なぜ病気になったのかを検査し、原因を取り除くことで、再発を防ぐことができます。
虫歯をつめたりかぶせたりしても、歯周病のクリーニングを受けても、数年で再発していては病気が治ったとは言えません。原因をとりのぞき、再発しない状態になってはじめて、病気が治ったと言えるのです。
健康な状態を生涯維持するためには、予防メインテナンス通院が不可決です。しっかりとコントロールされていれば、年に数回の通院で健康を維持することができます。
具体的には、定期健診とセルフケアの指導、そしてクリーニングを行います。
まずはお口の中を検査し、問題がないかを確認します。
問題が見つかった場合は、原因を考察し、対応します。
問題とは、虫歯や歯周病などの病気ももちろんですが、それ以前の、歯肉からの出血や、プラーク（歯垢）の付着部位やべたつき具合、歯のすり減りなど、病気になる前の徴候を注意深く確認します。
原因がセルフケア（ご家庭でのお手入れ）にある場合は、改善できるよう指導をいたします。
クリーニングでは、セルフケアで清掃できない歯肉の下や清掃困難な部分を、専用の機器を使ってカバーします。
最後に高濃度フッ化物塗布を行い、終了です。
以上は基本的な流れですが、ひとりひとりの病状や要望にあわせて、通院間隔や内容を変更します。
8020（ハチマル・ニイマル）運動をご存じでしょうか。過去に、歯科先進国スウェーデンで80歳の平均残存歯数が20本だったことに倣って、日本でもそれを目標に運動がはじまりました。ちなみにその時の日本の80歳平均残存歯数は8本でした。
健康な状態の歯の本数が上下左右に7本ずつで28本です。8本では上下左右に均等にわけても2本ずつ。とても自分の歯で食事はできず、大きな入れ歯やインプラントが必要になるでしょう。20本あれば上下左右に5本ずつですから、欠損部を治療で補えば、それなりに食事をとることができそうです。
日本でも、予防の概念が浸透しつつあり、80歳の平均歯数は17本にまで改善しました現在では、80歳で20本といわず、一生涯28本の歯を守ろうと、keep28（キープ28）という目標があります。
子供のうちから予防歯科を始めて、はじめから虫歯や歯周病にならない。理想的ですが、実は最も簡単に歯を守る方法です。治療を受けた歯は、無傷の状態より虫歯や歯周病になりやすくなります。天然歯と人工物の境目ができ、その部分に汚れがつきやすくなるからです。境目の段差の大きさは、治療精度や使用する材料によって変わりますが、全く境目のない天然歯を上回る治療方法は存在しません。
そして、人工物には寿命があります。
人間のかみ合わせは、その人がかかとで踏みつけるくらいの力があります。色々なものを食べるので、70℃〜−5℃程度の温度変化があります。食べるものによって、酸性からアルカリ性の変化があります。接着面積はせいぜい数センチ四方ほどしか確保できませんし、少しでも隙間が開けば、そこから細菌が侵入し、接着面を破壊します。口の中は人工物にとって過酷な環境なのです。
つまり、一度治療をしてしまうと、必ず何度かはやり直しをする必要があります。しかし、はじめから虫歯にならなければ、1回も治療をせずに過ごすこともできるのです。
また、虫歯や歯周病は細菌感染症であると同時に、生活習慣病でもあります。年齢が上であるほど、生活習慣を変えるのは難しくなります。子供の頃から、良い生活習慣で暮らしていれば、その子はなんの苦労もなく、当たり前に良い習慣を身につけることができます。
子供の虫歯予防で大切なことが3つあります。
ミュータンス菌は虫歯の原因となる代表的な細菌（う蝕原生細菌）です。生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には存在しませんが、奥歯が生える1歳6ヶ月頃から、子供の歯がすべて生えそろう2歳7ヶ月頃までに、周囲の大人から感染すると言われています。定着力の強い細菌で、一度感染してしまうと取り除くのは難しく、数が多いほど虫歯になりやすくなってしまいます。
ミュータンス菌の感染を防ぐためには、まず一番身近なお母さん・お父さんが治療と予防の処置を受け、お口の環境を整えて、菌の数を減らしておくことが大切です。
それに加えて、親の唾液が子供の口の中に入らないようにする工夫が必要です。例えば食べ物の口移しや、離乳食の咬み与え、箸などの食器を親子で共有することは控えましょう。
お菓子を食べた後、口の中がべたべたするという経験をしたことはありませんか？
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、砂糖を摂取すると、グルコシルトランスフェラーゼという酵素によって、不溶性グルカン（水に解けないべたつき）を生成し、歯の表面にくっつきやすくなります。くっつく力が強くなったミュータンス菌は、歯を磨いてもとれにくくなり、酸を出して歯を溶かし、虫歯をつくります。
砂糖の摂取頻度と量をコントロールすることが、虫歯予防においては大切です。食べてはいけないという意味ではありません。一人ひとりの口腔内の状況に合わせて、食べ方を考える必要があるということです。
歯の質を強くするために取り入れたいのがフッ素です。フッ素は歯の質を強化し、虫歯になりにくい丈夫な歯を作る手助けをしてくれます。また再石灰化を促進し、酸によって歯が溶けるのを抑える働きがあります。
一番簡単とは言いましたが、実践は難しいこともあります。お子さんの生活習慣を整えるには、保護者の方の生活習慣を整えなければなりません。また、親戚や友人、保育園や学校の先生などの理解も必要ですし、スーパーなどで売っている物も関わります。しかし、20歳になった時、虫歯も歯周病もなく、歯並びがよく、よい生活習慣が身についていれば、その後はとても楽に、そして健康に過ごすことができます。丈夫な体はお子さんへの最高のプレゼントです。
妊産婦の予防歯科をご存知ですか？妊婦さんを対象に、出産前後の歯の健康についての知識を身に着けてもらうことで、出産のリスクを高めないことと、生まれてくるお子さんの虫歯を予防することを目的としています。妊娠中、つわりによって歯磨きがしにくくなり、偏食がでたりすれば、歯周病や虫歯のリスクが高まります。
妊娠中の女性ホルモンに関連する歯周病(妊娠性歯肉炎)は、早産および低体重児出産へのリスクを高めます。妊娠中の状態によっては、歯科医院に通院することが難しくなる場合もあります。困ったことになる前に、出産準備の一環として、歯科医院の受診をおすすめします。
病気がない、健康な状態を維持するために歯科医院に通うことをおすすめします。
何も症状がないのに歯科医院に行くのは、忙しいし面倒、時間とお金の無駄と思っていませんか？
実は歯科医院の使い方を治療型から予防型に変えることで、長期的にみると費用も通院回数も少なく抑えることができます。
歯の問題が発生しても、治療のために仕事を休んだり、スケジュールを組み直すのは、忙しい方ほど難しいものです。
事前に計画された定期通院によって、歯の健康を守ることができれば、予定外のトラブルを最小限に抑えることができます。
仕事や家庭などで忙しい人にこそ、予防歯科はおすすめしたいのです。
また、歯科医院が怖い方にも、予防歯科はおすすめです。
怖いのに歯科医院に行くのか・・・と気が重くなるかもしれませんが、歯科医院が麻酔をして歯を削る場所ではなく、信頼できる歯科衛生士の、快適なクリーニングを受ける場所だったらどうでしょうか。
予防歯科を実践しているデータとして、「The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults Results after 30 years of maintenance」という非常に有名な論文があります。この論文によれば、３０年間で予防処置を受けた人は喪失した歯の本数が約1.8本、受けなかった人の喪失した歯の本数は約８本となりました。予防処置の有無ではっきりとした差が確認できています。
また、厚生労働省が行っている歯科疾患実態調査によると、50歳を過ぎた頃から抜歯本数が加速度的に増加していきます。
統計ですから、すべての人が必ずそうなるわけではありませんが、有用なデータであることは言うまでもありません。
過去のデータと比較すると、以前より虫歯は減少し、残存歯数は増加しています。これは、少しずつですが予防の概念が浸透してきたものと考えています。
メタボリックドミノという考え方があります。
ドミノ倒しが小さいものから順に大きいものを倒すように、生活習慣や小さな病気にしっかり対応しないと、徐々に大きな病気に繋がっていくという意味の言葉です。
虫歯や歯周病は、まさに小さい病気です。しかし、歯周病が糖尿病、心血管疾患、周産期合併症、メタボリックシンドローム、肺炎など、さまざまな全身疾患と関わりがあるのはもうご存じの方も多いかと思います。
また、虫歯や歯周病をくりかえして歯を失うと、食べられるものが限られて食事が偏りがちになり、少しづつ栄養状態が悪くなっていきます。
その結果、内分泌異常や筋力低下などを引き起こし、病気につながってしまいます。
統計調査によると、ご自身の咬める歯が少ない方ほど、また歯周病が重度なほど、しっかりと咬めて食事をとれる方に比べて、高齢になったときに年間の医療費が高額になります。それだけ、歯科だけでなく医科にも通院が必要になってしまうということです。
生涯にわたり自分の歯を守ることは、食べ物を噛む役割だけではなく心身共に健康に過ごすために重要なことです。
いいえ。今からでもきっとできることはあります。少しでもよい結果が得られるようお手伝いします。
虫歯予防のために塗布するフッ化物を適切に使用した場合に害があるというデータは、私の知る限りでは存在しません。
フッ素に害があるという話の根拠になっているのは、異常な量を摂取（例えば、歯磨き粉を毎日何本も一気飲みする程度）した場合に健康被害が出るというものや、虫歯予防のためのフッ化ナトリウムではなく、工業用途などで使用される別のフッ素化合物と混同しているものです。
フッ素は適切に使用すれば、虫歯予防に対して、とても簡単に高い効果を得ることができます。
ただし、もしそれでもご心配でしたら、無理に塗布することは決していたしません。スタッフにお申し付けください。
当院では一般歯科で治療も行いますのでご安心ください。
予防をして歯を維持していくためには、精度の高い治療をしてあることが重要です。適合の悪い（微小な隙間がある）かぶせもの、つめものでは、がんばって予防処置を行っても、長期的に歯を維持することは難しいのです。
お口の健康維持のためには、予防と治療の両方が重要です。
はじめから治療の必要がないのが理想ですが、もし治療を受けなければならなくなってしまったら、できるだけ精度の高い方法を選択されることをおすすめします。
歯磨きができていれば痛くありません、というと意地の悪い言い方ですね。
歯石取りは、歯の表面についた歯石に超音波振動を与えて砕き、除去しています。歯の表面に知覚はありませんから、本来痛くないはずの処置です。
歯石取りが痛い原因はいくつかあります。
そのうち１つは、セルフケア（ご家庭での歯磨きなどお手入れ）が不十分で、歯周病によって歯肉がひどく腫れている場合です。このような状態では、パンパンに炎症を起こした、血だらけの歯肉の下に歯石が潜り込んでいるので、どうしても器具が歯肉に触れてしまい、痛みが出る場合があります。
そのような場合は、まず歯磨きの指導をうけていただいて、セルフケアを改善し、歯肉の腫れを軽減してからであれば、痛みなく歯石取りを行うことができます。
原因はさまざまですが、何れにも対処方法があります。岡戸歯科医院では歯科衛生士を担当制にしておりますので、ひとりひとり個別の対応をしやすくなっています。
おおむね1ヶ月です。見た目には毛先が開いていなくても、毛の一本一本が摩耗して、清掃効率が落ちてしまいます。がんばって磨いているのに汚れが落ちず、病気になってしまうのはもったいないことです。歯ブラシをある程度まとめ買いして、毎月１日など決められた日に変える習慣をつけるとよいでしょう。
ひとりひとりに合う歯ブラシを処方しますので、個別にご相談ください。
基本的には、毛の密度が高く、ある程度の硬さがあって、標準的な形のものがおすすめです。
歯ブラシにはそれぞれコンセプトがあり、適当に磨いてもそれなりにきれいになるものや、使いこなせば高いレベルの清掃をすることができるもの、細かい部分が磨きやすいものなど、いろいろです。ひとりひとりの歯並びや、歯磨きのテクニックによって、できるだけ簡単に高い効果を得られるよう、選択する必要があります。
毎日1回は使用して頂くことをおすすめします。
以前は補助清掃器具と呼ばれていましたが、今は歯間清掃器具と呼ばれます。
補助ではなく使うのが普通のものということです。
歯ブラシだけで落とせる汚れは全体の６割程度です。のこりの４割は歯の間で、主にここから虫歯や歯周病が発生します。
歯の間のプラーク（歯垢）を歯ブラシで落とそうとすると、プロが３０分から１時間ほどかけても難しいものですが、歯間ブラシやフロスといった歯間清掃器具を使えば、練習は必要ですが、１分ほどで簡単にきれいにすることができるようになります。